それからしばらくして、戸波さんが離れの社屋で作業しているところに出くわした。
たまにお客さんにものを見てもらう会議があって、
その際には大量のサンプルを持ち寄って、並べたりお店での展示を考えたりする。
やからその会議の時には大量のサンプルが揃う。
わたしが出くわしたのは、翌日の会議に向けて取引メーカーさんのサンプルを仕分けしていた所だった。
戸波さんの担当法人は、わたしの上司の担当法人やわたしの担当法人と全く品揃えが違うので、サンプルも初めてみる商品ばかりだった。
戸波さんがいるとか関係無しに、もの珍しいサンプルの数々に目を奪われ、フラフラと近寄ってあれこれ見ていた。
ふーん、こんなんあるんや。かわいいな。
どうやって使うもんなんかな?とか
興味津々で見ていたら、戸波さんが作業の手を止めて
こちらにやってきた。
あ、すみません、お邪魔をするつもりはなくて。見た事無いものばかりやったから、気になって、
と言ったら
ええんよそろそろ飽きてきた頃やし、と言って
また色んな商品知識を教えてもらって
なにか欲しいのある?と聞かれ
迷いながらもいくつか選んだら、
会議終わったらこっそりあげるわ、と言ってくれた。
そして
会議やから、色々メーカーくるし紹介したろか?
とも言ってくれた。
もっとメーカーさんと顔見知りになりたい話をしてから1ヶ月近く、タイミングも時間も合わんと結局紹介してもらえることもなかったから、
てっきり忘れられて居るものと思っていたから
じんわりと嬉しくて、あかんと思いつつもほんのちょっと戸波さんへの恋心を意識した。
その後しばらく黙って商品を見ていたけど、
急に恥ずかしくなって逃げるように帰った。
