ちょっとビビりながら乗る。


どんな顔して乗ったらいいの。

あの日からはじめて、ちゃんと顔合わすんやけども。。
うー、、緊張する。。


おつかれさまです………


すごい緊張して、全然ニコニコできないまま車に乗った。
待ち合わせしてくれはったのむちゃくちゃ嬉しかったのに、にこりとも出来へんくらいに緊張していた。


黙ってシートベルトを締める。



送ったるわー。


視線を感じる。

戸波さんは運転しながらも大分チラチラこっちをみながらお話してくる。

いややな恥ずかしいよう。。

目も合わせられんと、必死で戸波さんの方を向いてはパッと顔を背ける繰り返しやった。


戸波さんはそれを見るたびに、


なにー?どしたん?


とか言いながらおかしそうに笑った。



わたしの家までは会社から車で40分くらい。

戸波さんに聞かれるままに色々話した。
随分と色んな話をして、戸波さんの気の利いた返しに笑った。


戸波さんが笑ってくれるのが嬉しかった。



わたしの家の真横はコンビニやから、そこの駐車場に停車して1時間半くらいお話した。


そろそろ帰るわ、


それを聞くとまたずるいわたしはおねだりをした。

頭撫でて。頭ぎゅうってして。


しゃあないなあ、と言いながら何度もおかわり、おかわり、といって撫でてもらうのを繰り返した。

これくらいのわがままやったら逆にかわいいって思ってくれるんちゃうん?


そういうずるい気持ちがもちろんある。

奥さんのもとに返したくないとかはない。
奥さんがおるからこそたぶんわたしは戸波さんが好きやし、戸波さんも恋愛する余裕があるんやと思ってるから。


それとは別次元で、わたしにズブズブになって欲しいし、奥さんのことを考えるときとは比べ物にならないくらい心を動かしてわたしのことを考えて欲しい。


そう思ってるから、馬鹿な頭であれこれ考えて駆け引き的なこともチャレンジしてみる。




しゃあないなあもう、の時の顔が一番すき。


愛おしくてたまらない、と実家の犬の写真を見せてきたときと同じ顔しよるよ。

戸波さんはそれでいい。ずっとそういう顔してて。



潮時かな。


戸波さんの表情が戻った瞬間、ドアを開けた。


送ってくれはって、ありがとうございます。

楽しかった。



また助手席側の窓を開いて、戸波さんがバイバイしてきた。

運転姿勢の荒い戸波さんは、思いっきりハンドルを切りながらすごい速度で道に消えていった。