休みが明けて、月曜日。


あのメールはおろか、言っていたことは全て夢だったのではないかと思うくらいに長い時間が経ったようだった。

日曜日にせっせとチョコを作り、ラッピングをした。
お菓子作りは得意だし、バレンタインなどなくともよく作るから、緊張することはないのだが

やけに力んだり変にあれこれ考えてしまって、逆にいつもより上手く出来なかった気がした。


そんな何も、好きやと言われたくらいで張り切ってクソ重いチョコ作りたくない。

そんな浮かれた恋愛脳ガールみたいになりたくない。

そう思えば思うほどますます意識してしまって、自分でも滑稽なくらい緊張し、ドキドキと胸を高鳴らせてしまっていた。



ラッピングとデコレーションだけは凝らないぞと決めてたから、すんなり収まった。

あとは渡し方だ。

明日は月曜日、バレンタインは水曜日。
しかしながら水曜日は外回りでわたしが不在。


となると月曜日しかない。

やけども、月曜日は週初めの会議もあるから会社にはほとんどの人が来ているはず。

営業部には私含め女の子が3人しかおらんのやから、あえて特定の誰かにあげようものならすぐにバレてしまう。


思い悩んだ上、サンプルの箱に買いチョコ・手作りを全て入れ、あたかもサンプル返却であるかのような書類まで付けてデスク下に置くことにした。



戸波さんの席はわたしのとこからは離れているから、朝礼後のみなさんが出払っているうちにサクッと置こうかな。。

朝礼は、事務所からかなり離れた場所でやるため、一旦人が居なくなる。もちろん、朝礼には参加せんとあかんから、
みなさんが出払った後の朝礼前じゃなく、朝礼が終わってからの短い時間でやらんといかん。


その流れを何度もシミュレーションしながら、朝礼後。


みなさんを上手くかわしながら、事務所にダッシュ。


あまりにも急いで帰ると怪しいので(最も、いつも比較的サッサと事務所にもどるわたしが多少小走りやろうと、怪しく思う人はいない気もしたが)


ドキドキで震える指先に必死に力を込め、デスク下に箱を置いた。

あらかじめ書いておいたメモを添えて。


「机の下注意!蹴らないで。
あとでみてください。」



テンキーの00と0のキーの間ににメモを挟むのがわたしのメモです、というさりげない主張やった。

まだ個人PCがなくPCを借りた時、お礼のメモを挟むのがわたしの慣例だったが、

以前から戸波さんへのメモには一言お礼以外に違うことを書いていたから、
万が一他人に見られるのが恥ずかしくそれをはじめた。


そのうち、メモを挟むときはそこを定位置にするようにした。


メモスタンド代わりにつかわれるテンキー。

これは、わたしだけの戸波さんへのアプローチ。




しばらくしてからコピーを取りに行きがてら戸波さんの席をチラ見したら、メモはもう無かった。

置いた箱の位置も変わっている。
蓋に貼ったカモフラージュの書類がそのままということは、メモに書いた通りまだ中は見ていないのだろうか。



うんうん。ミッション完了。


サンプルの箱なら、なんの怪しさもなく
事務所からクルマの中へ移したりできるやろうし。
やっぱ、サンプルの箱にして良かった。



その後は戸波さんと話す機会に恵まれなかった(戸波さんたちメインの営業は、月曜日の会議に出るため)

が、昼過ぎにメールが来た。


今週の予定を報告し合って、今週は月曜日しか予定が合いそうにありませんねと言うと、今日はあんまりやる気起こらへんし合わせるわ、と返ってきた。


そんなんでいいんですか、とも思ったが

わたしも仕事が無いわけではないし、戸波さんがそんなに早く帰るのもおかしいので(会社から家が近いこともあり、会社が閉まるギリギリまで大体いつもいる)


最近は経費削減の為、19時には会社が閉まる動きになるから、19時ならば問題ないやろうと考えた。

19時までを限度に仕事するようにします、と返した。



分かった
もしはやく出るならどっかで待ってて。



待っててほしいんや。
はやく出るなら先帰ってとかでなく。

そういうとこがいややなぁ。
ちょっときゅんとするやん。



その後の仕事の捗ること捗ること。

月曜日やから忙しかったのに、あっと言う間に仕事が片付き、時間も過ぎ去り、気づけば18時になっていた。