嘘だらけの秘密


わたしが大きなミスをした。

入社してから初めての大きなミスやった。

原因は取引先との意見の食い違い。

大したことではなく、取引先がかなり高圧的だったために招いた事態だったが、
初めての大きなミスやったのでかなり焦っていた。

相手は小さな法人の若社長で、大分自由奔放な気まぐれ人間。調子がいい事ばかり言う。

その人のいうことを鵜呑みにしたせいで馬鹿をみたので、やんわりと、
今後このようなことがありますと困ります、どうすれば良いでしょうかご教示下さい、と電話をしたところ

かなりの怒りを買い、支店長を出せとどやされた。

わたしにとっては売り上げを上げ損ねたわけやったから、なんでそんなん言われなあかんねん、このまま黙っとって次もっと痛い目みたらわたしが怒られるやん、そう思う反面

上司に言いたくないな、怒られるかな、
あなたまでミスせんとって下さいとかゆうてまたパニクるかな、とか色々考えていた。


上司が頼りないあまりに言いにくく、

大丈夫です、こうすればよかったです、みたいなまともな回答が来るとも思えんくて迷っていたら、定時を過ぎてしまった。


それでも当日中に言わんわけにはいかんので、

席から少し離れた場所で上司を捕まえて、打ち明けた。


上司は、わたしを責めた。

わたしはどうすれば良かったか、分からなくなった。

買ってくれると言うたから、モノを用意した。約束したと思ったのに、いざ用意出来ましたとなったなら、そんな約束はしていないいい加減にしろと言われた。

そんなんおかしいやん。嘘つきやん。

それあなたに相談しても、あーそうですかしか言わへんかったから、違う上司に相談したら一発言うたれ言われたから言ったんやん。

そしたらこんなんなって。

やったら普通に嘘つかれて売り上げ作り損ねたままでよかった?

それ防ぐためにどないしたらよかったん?
それも教えてくれんと責めるだけ?


支店長に話はいくんやろか。

支店長に、あいつはヘマして、て悪く思われるんやろか。

取引先への電話は、極めて下手に出たつもりでおったし、不備があったとも思えん。


どうしたらよかったの。


頭の中がぐるぐるして、涙が出た。

あなたが聞いてくれへんから、こんな目に合ってんよ。
逐一相談しよんのに、任せます自分でやって下さいばかり言うから馬鹿をみて、そこでも相談してもなんも言ってくれんから、対処せなと思って、電話したのに。


そんな恨みつらみと、ふがいなさ、

さらりと取引先にかわされた悔しさで涙が溢れた。


事務所でもう涙腺が崩壊してもうてて、仕方なく手近な空き部屋……会議室に逃げ込んだ。