「タイミングが合う時」っていつなんやろか。
そんなことばかりが頭をぐるぐるした。
久々にあんな気持ちになった。
時が止まって、このままずっと車内にいたい。なんもせんでいいから、戸波さんのかおを見てたい。
婚約者と初めてあった時にすらそんな気持ちにはならへんかった。
何故なら、これまでの人生1度も自分から好きになった人と付き合えていないから。
婚約者はわたしが結婚するに最適な人間やと思うけど、どれだけ一緒にいてもときめいたことがない。昔からずっと。
それに比べ、戸波さん。
父親譲りの関西弁のせいで、馴染みが深い関西弁。
関西人特有のおもしろい言い回しのあれこれ。
男らしくて、頼りがいがあって、優しい。
よく見ていてくれてるし、大人やからか、気が利く。
悲しいくらいに好きやった。
戸波さんがどう思っているかもしらないまま、
平然と、何のことも無かったような顔をして出社。
冷たい顔で、おはようございます。
誰に対しても一緒の口調を、と意識。
意識すればするほど危ういのは分かってるのに。
戸波さんも冷たい顔。
ムスッとした顔で、おはよ。
戸波さんの言葉がよぎる。
タイミングむちゃくちゃ合うんやったらほんまそういう運命なんやと思わへん?
やからタイミングが合う時っていつなん?
つぎいつやったら一緒にドライブいける?
また辛なって相談したくなるくらいまで
仕事を頑張らな行けんて意味?
そのくらいまでタイミングは合いそうにないと遠回しに言ってる?
イライラして、でも人のやし、結婚してはるし、となんども言い聞かせた。
戸波さんが視界に入る度に胸がざわついて、集中力が途切れた。
たまに言葉を交わす機会があっても、それ以上連絡を取る手段がないから余裕が持てない。
LINEを交換したいなんて思わない。リスクが高すぎるから。
でも、社用ケータイのショートメールまで奥さんチェックするなんておかしない?とも言えるわけもなく。
出来る連絡は、社内ネットワークのメッセージ。
あるいは、社用PCのメール。
どちらもほぼほぼ社内におらんと使えへん。
というか、勤務時間しか使えへん。
どうやって近づいたらいいのやら。
そうため息をついていた矢先、事件が起こった。
