嘘だらけの秘密



翌日。

メールはあかんと言われていたので、メモを机に置いた。

ありがとうございます。あまり眠れませんでした。ちょっとドキドキしちゃって。

そんな内容やったと思う。


返事はないと思ってた。

しかし、離れで出くわしたとき、ニヤニヤした戸波さんにこう言われた。


眠れんかったん?やから朝一でコーヒー飲んだん?


不意打ち過ぎてなにも言えなかった。

コーヒーを飲むのは眠い日の日課であって、なにも今朝が特別なわけではありません。

眠れなかったのはまさにあなたのせいですけど。まさかあんな素敵な夜がくると思わへんし。

色々言いたいことが駆け巡ったが、結局わたしの口から出たのは


そうなんです…心臓バクバクやって。


そんなどうしようもない一言やった。

戸波さんは何度も頷いてはふうん、と言い
またいつになくニヤニヤした。


なんですかその顔。

いや、可愛らしいなと思って。
ほんならね。


風のように去っていった。


もうダメだった。完全に好きになっていて、
何かあれば絶対言ってしまう。

あかんと分かっていますけど、あなたが好き。
そんなセリフが絶対に口から出てしまう。


もしかしたら社内の人に顔でバレる?
戸波さんを見る目、絶対ほかの人を見る目とちゃうに違いない。

もう戸波さんなんて見ない。

絶対社内で褒めない。


言わんともう戸波さんはわたしの気持ちなんて知ってるとは思うけど

絶対に言わない。伝えたらあかん。


固く決意した。


固く。。。


のはずやった。