「待って……!」
ガバッと勢いよくベッドから起き上がる。
眠っていた私は、どうやら夢から目覚めたらしい。
激しく騒ぐ動悸と冷や汗が、身体を襲った。
……久々に、嫌な夢を見た。
部屋の窓から外を見れば、雨が降っている。
原因はこれか……。
雨が降る日はどうしても思い出してしまう。いつになっても消えることのない、あの悪夢のような日々を。
思い出したくもない、数年前の出来事。
いなくなった父親のことを考えないようにしていても、雨の日は嫌でも思い出してしまう。
なのに不思議なことに、いつからか父親の顔は思い出せなくなった。