「っ!!」
まるで逃がさないと言わんばかりに、尾崎く私の手を優しく、けれどギュッと握った。
以外にも骨ばった大きな手は、いとも簡単に私の手を包み込む。
「逃げようとする藤咲さんが悪いんだからね?
だから、不可抗力」
絶対違う気がする……!
けれども、私は言い返せず、尾崎くんの言いなりになるしかなかった。
だって……。
〝俺の前からいなくなるなんて、許さないから〟
尾崎くんのその言葉が、嬉しかったから。
だってその言葉は、イコールここにいてって意味でしょ?
私みたいな存在意義のない人間を、ここにいてもいいよって言ってくれる唯一の存在。
たぶんそれって……ううん。
そんなこと言ってくれるのは、きっと、君だけ。
今だけは、どうかその手を離さないでほしい。
私は尾崎くんに気づかれませんようにと願いながら、繋がれた手を……ほんの少し握り返した。