「目覚めてすぐ、隣に藤咲さんがいるなんて、サイコーだね」
「……じゃあ次に目を閉じたら、そっとここを出て行って、尾崎くんの前からいなくなるよ」
いつもの仕返しと言わんばかりに、私は意地悪なことを言ってみせた。
我ながら、することが子供だと思う。
〝いなくなる〟なんて、本当は自分が一番嫌いな言葉なのに。
「そんなのダメ。俺の目の届くところにいて」
だけど尾崎くんは、意外にも真剣にそう言ってきた。
だから私は冗談でも何も言い返せなかった。
「俺の前からいなくなるなんて、許さないから」
「や、冗談だし……。ただ、部屋出て行くだけじゃん」
「ダメ。今ここは、俺の特等席なんだから。勝手に俺から離れちゃダメだよ」