「……それは……」
ある……、と思う。
初めて私が好きになった人。
けれど、〝私〟を見せれなかった人。
だからすれ違って、捨てられて……しまったのかもしれない。
私が悪かったんだと思う。
もう思い出せない程遠い過去の記憶に、想いを馳せる。
その人の顔を思い出そうとして、
「ムカつく」
彼の言葉が消し去った。
「え?」
「否定しないってことは、肯定と同じだし。
まじムカつく。そいつぶん殴りたい」
今までの優しげな雰囲気はどこへやら、急に物騒な言葉まで使ってる尾崎くんに、目を見開く。
「……な、何を言って……」
「藤咲さんの心ん中、俺でいっぱいにしたい」
──ドキッ。
……い、いや。なにこれ、おかしい。
ここでときめくのは、絶対におかしい。
「藤咲さんのこと、めちゃくちゃ欲しい」
ああ、なんて甘い声で私を求めるの。
そんな君の願いに応えることなんてできないのに。



