彼は引き寄せるのをやめ、代わりに顔を近づけて聞いてきた。
それに全力で頷くことしかできない私。
「俺のこと、無視しないでくれる?」
コクコクコクと、それはもう連続で頷いた。
「よかった。 あ、あと俺の告白をなかったことにしないで」
「……わ、わかったから……」
はやくこの手を離して。
私の心臓が壊れる前に。
「藤咲さん、顔真っ赤じゃん。涙目になって、可愛すぎるんだけど」
……取り乱してしまって恥ずかしい。
クスクスと笑う彼に、ますます私の顔は熱くなった。
絶対に3割増しなんて嘘だ。めちゃくちゃ余裕そうじゃないか。
2割り増しも嘘。それは私の方だ。心臓がバクバクして、うるさい。
こんなの、一種の脅迫じゃん……。
するとふいに、彼の手が伸びてきて私の頬に触れる。



