「ふざけるのもいい加減にしてくれるかな」
私はちょっとだけ声を低くして言い返した。
「なんで?俺全然ふざけてないよ?」
こっちは真面目に言ってるのに、キョトンとした顔で私を見つめる彼に脱力してしまう。
思わず気を抜いてしまいそうになるのは、尾崎くんのこの雰囲気が原因なのかもしれない。
「そういう冗談いらない」
「なんで冗談って決めつけるの?」
「信じられないから。私みたいなやつを好きっていう人なんているはずない」
「ここにいるよ。藤咲さんの目の前に」
躊躇いのない真っ直ぐな言葉に、私はたじろぐ。
まるで本心だと言わんばかりの言葉。
でもまさか……。騙されるものか。
「会ってまだ数日のやつの、しかも冷たくしてる私のどこを好きになるの?信じられるわけないじゃない」
「冷たくしてる?どこが?」
「無視してるし」
「ははっ。自覚あるなら俺と話してよ」