「じゃあまず、女子部員の部室はここにあるから」
平井先生は重そうに椅子から立ち上がると、体育館に入ってすぐ左方にある扉を指差した。
「他の部活は外に部室があるんだが、卓球部だけ体育館の中に部室があるんだ。少し狭いと思うが、今後はそこへ荷物を置いて着替えをすませるように。
あと、今日はまだラケットを持ってきていないと思うから、ラケットは部室にあるものを使ってくれ。カゴの中にたくさん入ってるから」
「はい、分かりました!」
私はもう一度平井先生に頭を下げ、部室と説明された扉の前まで歩く。
扉を開けると、中からは汗と制汗剤が入り混じったような匂いがした。
平井先生が言っていたように、部室は縦長でとても狭い。入って両側に大きな荷物棚が設置されているおかげで、10人入るのがやっとくらいの広さだ。
私は空いているスペースに荷物を置き、持ってきた体操服に腕を通す。
体育の時間以外で体操服を着るのは今日が初めてだ。
運動部の人達は何気なしにやっていることだろうけど、私にとってはそれがとても新鮮だった。
そして、カゴの中に入っていた卓球ラケットを1つ取り出す。たくさんラケットがある中で、一番綺麗で新しそうなものを選んだ。
これから私が日々使うことになる卓球ラケット。今日は部室にあるものを使うけど、もう少し経ったら自分のラケットを持つ日が来るんだろうなあ。
そう考えると、無性にドキドキした。
準備を終わらせた私は次の指示をもらいに再び平井先生の所へ行く。平井先生の話によると、体育館の中にいるのはほとんどが2、3年生であり大半の1年生は体育館を出たすぐ横で練習をしているとのことだった。
なので、外にいる1年生に練習メニューを教えてもらってくれとのことだった。