勇気のカケラ -いじめに負けないで-



卓球台の片付けと体育館のいたる所に散らばったピンポン球を回収するのは、私達1年生の仕事。
そして、それらが片付くと1年生の男子部員と手分けして体育館をモップ掛けする。


その間に先輩達は3年生、2年生と順番に部室に入り、帰り支度を整える。

2年生の先輩達が全員部室から出てきたら、私達1年生が部室に入ることを許される。



「あ〜今日も疲れたー!」

「あ、麗華そのスプレー貸して〜!」

「いいよーん!別のもあるけどそれでいい?」



1年生が12人、詰めるようにして部室へ入る。

部活が始まる前に荷物を置きにここへ入った時は10人入るのがやっとだと思ってたけど、なんとか頑張れば12人は入れるらしい。

でも身動きが取りずらく、狭い空間に充満した汗と制汗剤の匂いは入り混ざって強烈な匂いを放つ。ずっといたらむせて酸欠になりそうだ。



「あ、そういえば美由紀!」



私の隣で着替えをしていた菜美が振り返った。


「さっき言うの忘れてたけど、上下関係って大切だからさ。着替え終わったら先輩達に挨拶しとった方がいいよ!」



運動系の部活は上下関係が大切。


どこかの本に、そんなことが書いてあった気がする。先輩に目つけられたら大変だとか、挨拶や敬語はしっかりしろだとか……。


菜美が言うことは最もだ。


「分かった!ありがとう菜美。教えてくれて!」


それを聞き早く着替えて先輩に挨拶をしようと思ったけど、皆よりも着替えや片付けに慣れていない私は結局一番最後に部室を出るハメになった。

全員着替えが終わるとミーティングが始まると聞いていたので挨拶するタイミングを逃したと思ったけど、幸いミーティングはまだ始まっていない。

1年生の男子部員がまだ着替え終わっていないみたいだからだ。


今の内に、と私は先輩達の所へ駆けていく。

顔も名前もよく知らない先輩達に挨拶をするのは、同級生に挨拶するのよりも緊張すると思った。


先輩達の前に立ち、私はすうっと息を吸う。



「先輩っ…、突然すみません!私、今日から卓球部に入ることになりました、河原 美由紀です!よろしくお願いします!」