「あっ…」



朝の下駄箱で私、井上美緒【いのうえみお】は、その言葉をつぶやいた。



目の前には、私の彼氏の相原くんと知らない女の子。




そう。



これはれっきとした浮気現場だ。



でも私は、何も言わずにその横を通り過ぎる。




「あっれ〜。一輝くん、今の彼女じゃないの~。」




わかっているくせに、わざとらしく女はそう言った。



「あ~。うん、そうだな。」



そうだなって、わかってるならその繋いでる手を今すぐ離せ‼



って前の私なら怒っていただろうけど



今はそんなことをするのさえ諦めてしまっている。