彼の嘘 彼の本音

「！ヤバい、田村君だ！」

「嘘！超ラッキーなんだけど。」


小声で、興奮気味に話すクラスの女子達に､


彼女達が見てる方に視線をやれば、


背の高いイケメン君がそこにいた。


“田村君”と呼ばれた彼は、


後々、学校中の女子が一度は恋するとまで言われる人になるわけだけれど、


身の程知らずなあたしは、


その夜、一目で彼に恋してしまった。


　

それからというもの、


クラスも違うし、部活もしてないあたし。


委員会も一緒になることもなかったし、


彼との距離が縮まる事は全く起こらなかった。


噂で聞く彼の話や、


偶然見かける彼の姿でしか、彼を知ることは出来なかった。


だから、彼があたしを知ってるわけなんてないだろうし、

ただでさえ、普通なあたしを


彼が彼女にしたいと思う理由なんて、わからなかった。