そう言って藤真君はファミレスと反対側に歩き出す。

そしてどうゆうわけか、あたしのマンションのエントランスに向かう。


「と、藤真君。」

「部屋番号は?」

「あ、1703。」

「……最上階か。」

「え?」

「いや、…行こう。」

「え?も、もしかして、あたしの家?
いや、あ、あの、今日は部屋片付け出来てなくて、
いや、あの、ずっと寝てたから。あ、いや、寝てたって、ダラダラしてたんじゃなくて、」

「荷物置くんだろ?」

「え?」

「着替えも、したいんでしょ?」

「あ、…う、うん。」

「俺はその格好、結構好きだけど。」

「えっ!?」


えっ!?今なんて!?

『好きだけど』、そう言ったよね?!



初めて。初めて聞いた。

『好き』の言葉。

いや、あたしが、じゃないのは分かってる。

でも、…藤真君の“好き”に、あたしはひとつでも当てはまれた。


「嬉しい。」

「…。」


思わず口から出ていた言葉に、あたしは気づいていなかったから、

藤真君がどんな気持ちでそれを聞いていたかなんて、

全く想像出来なかった。