彼の嘘 彼の本音

結局、働こうが、家を出ていこうが、大人になるまではあの人の保護下にあるんだ。


…あと、4年か。


成人するまでの辛抱だと、諦めるしかない。


「大樹先輩。」

「なに?」

「心配、ありがとうございます。」

「…。」

「…やっぱり、帰ります。」

「…。」

「迷惑かけてすみませんでした。」

大樹先輩があたしを探してくれたこと、

あたしを見つけてくれたこと、

心配してくれる人が一人でもいる。

それだけでもう充分だ。


「じゃあ、…ありがとうございました。また。」

「夢。」

「…大丈夫。もういないだろうし。」

「…大丈夫じゃ、ないだろ。」

「…なんで?いつものこと、だし。」


そう言って、玄関に向かうあたしに、


「夢。」

「ん?」

「ほんとに、大丈夫か?」

「うん。」

「じゃあ、なんで手、震えてるんだ?」

「…え?」


大樹先輩に言われて、自分の手を見る。

「…っ、あ、…寒い、のかな。でも、大丈、ぶ。大丈夫。うん、だいじょ、」


「嘘つくな。」

「…っ、」

「大丈夫って、言い聞かせてるだけだろ。
怖くて仕方ないって、そんな顔で言われてもほっとけるわけねーだろ。」