じっと見つめていると、首をかしげられた。
彼女の長い黒髪が、サラサラと肩から落ちていく。

髪をすくって、抱きしめて、名前で呼び合いたい。

俺は頭を振って、その気持ちをぐっと堪えた。

雇われ執事の身。
凛と付き合うな、なんて理不尽な契約書にもサイン済み。
バレちゃいけない、バレちゃいけないんだ……。

「頭、痛いの? 振って大丈夫?」

可愛い彼女は見当違いなことを言っている。
心配そうに見つめられて、力なく頷いた。

翌朝、この時の分まで、凛の部屋で思いっきり彼女を抱きしめて充電した。