高校生活が始まって数日が経った、4月のある日の朝。

凛の部屋に「お嬢様を呼びに行く」って名目で凛の部屋に入った。

だけど、それはその名の通り、ただの名目。建前でしかない。

朝のこの僅かな時間は、僅かな時間だけは、春休みからこっそり付き合っている、俺達の秘密の時間。

俺は凛にねだられて、キスをした。

腕の中で幸せそうに微笑む凛が愛おしい。

可愛いな、もう……。

強く抱きしめると折れてしまいそうな華奢な体を優しく抱きしめて、彼女特有の甘い香りに包まれる。

どうしてあんな男の娘が、こんなに可愛くて優しくて思いやりがあるんだろう?

って、考えても分からないし、凛との貴重な二人っきりの時間にそんなこと、考えてたくもない。