「凛、俺そろそろ行かないと。
最後のアトラクション、何にする?」

「え? もう……。
そっかぁ……」

驚いた顔をして、それから時間を確認して。
凛は一瞬しゅんとしたけど、顔を上げてにこりと笑った。

「観覧車に乗ろうよ、翔護」

「分かったよ、行こうか」

観覧車は空いていて、すぐに乗ることが出来た。

向かい合って乗るものだと思っていたんだけど、凛は俺の隣にやって来た。
ぐらりと揺れる小さな空間。

ぎゅっと凛が俺の腕を掴む。

「楽しい時間って、どうしてこんなに早く過ぎちゃうんだろうね……?」

さっき俺が思っていたことと同じことを、今凛が実感しているようだ。

「……本当に、今日は楽しかったね。
大丈夫、またデート出来るから」

実際難しいけど、今日は奇跡だったけど、希望を捨てちゃいけない。

観覧車の中で、いつもとは違う2人だけの空間でお互いにひっついて、風景を楽しむどころじゃなかった。
キスをして、抱きしめて、地上で扉を開けられるギリギリまで、彼女を独り占めした。

愛おしい……。
俺の凛。

手を引いて観覧車を降りる。