白い息の向こう側

「なんか、馬鹿馬鹿しいわね。私は二十二歳よ」

「そうなんだ。僕と十二歳違うんだね」

 どういう意味なのか、私は計りかねた。

「ていうか、こっちでいいの?」

 私のマンションのほうじゃない。数メートルもしたら私が借りてるマンションに到着するわ。

 ここら辺りは以前にも小学生に声を掛けた不審者がいて、予防のために街頭が増えたんだっけ。おかげで明るい。

「うん。ここでいいよ。ありがとう」

 手を離してマンションの向かいにある家に駆けていく。

「えっ? そこなの?」

 マンションの向かいは一軒家でそこそこ立派な家だ。誰が住んでいるのか知らなかったけど、この子の家だったのね。

「ねえ」

「何よ」

「今度、デートしてね!」

「は?」

 なに言ってんの、このませガキ。

「十二個なんてちょっとじゃん!」

 絶対だからね! 子どもらしい笑顔で手を振って家に入っていく。

 残された私はたまったものじゃない。

「うそでしょ」

 顔が赤くなっていくのが自分でもわかった。





  終


2018/02/09 河野 る宇