白い息の向こう側

「君、いくつ?」

 沈黙しっぱなしというのもなんだから、歩きながら質問した。

「十歳。お姉さんは?」

「私はいいのよ」

「何がいいのかわかんないんだけど」

 少年はそう言った私の手を握る。ちょっとびっくりした。

「年齢を隠す意味って、自分が老けてみられるのが嫌とかなの?」

「ふ、老けてなんかないわよ」

「だったら堂々と言えばいいじゃん」

「うるさいわね。殴り飛ばすわよ」

 不審者から助けておいて殴り飛ばすとか自分でもやばいと思った。実際に殴り飛ばすわけはないけど。

「何が嫌なのかわかんない」

 そう言われると確かにそうかもしれない。なんとなく嫌がる事が当たり前のようなご時世だけど、本当に嫌がる意味はない気がした。

 私はなんで嫌がってるの? そういう風潮だから?