遠くに行っても

次の日も次の日も、毎日朝起きるとお母さんが居てくれる。
それと同様に、毎晩誰も居なくなった空間で泣いてる自分がいる。

今日は珍しく昼に用事があると、お母さんは早く帰ってしまった。
暇になった私は、ケータイで脳腫瘍について調べて見た。

・記憶障害
・運動障害
・性格の変化

えっ。全部当てはまる。
ケータイの画面を見て、思考が止まる。
そっか、前兆があったのに私は気づかなかったのか。
その先を見るのが少し怖くて、ケータイを机に置いた。
するとカーテンが開いた。
そこにはクラスの子達がいた。
「よっ」
「元気か?」
「久しぶり!」
いろんな声をかけてるれるみんな。
男子がバカやった話とか、受験の話とか、いろんな話を聞いて、ここでもまたたくさん笑った。

みんなが来てたくさん笑った分、夜ひとりになったとき、寂しさが大きくなる。
遺書を書こうと決めて4日が経った。
順調に遺書は書いてるけど。
泣けちゃう。
もし遺書が全部書ききれなかったらって、そんなことも考えちゃって。
でも、文字が書けなくなる前に書かなきゃ。
そんな不安でもっと涙が出てくる。
同室の3人に聞こえないように、声を押し殺して泣くのも、もう慣れた。

カーテンが開いた。
えっ、誰?!
そこには先生が立ってた。
「中野?!泣いてるのか?」
先生は小声でそう私に尋ねた。
先生は私になぜ泣いてるのか聞かず、口を開いた。
「そりゃ、もう1ヶ月って言われて、涙出ないわけないよな。今まで無理して笑ってたんだな。気づけなくてごめんな。」
そんな言葉に、余計涙がこみ上げて来た。
「今までもうまくいかないことが多くて、それでも笑ってたよな。もういいよ、俺の前では無理して笑わなくて。」
そして、先生は私の肩に手を置いて、ポンポン叩いてくれた。
それが心地よくて、落ち着いた。

気づけば自分から話し始めていた。
「本当は、死にたくない。みんなとお別れしたくない。親にも先生にも、みんなに迷惑かけて、恩返しもしないまま死にたくたい…」
黙って先生は聞いてくれて。
気づけば私は疲れて寝てしまった。