手術は無事に終わった。
けど、意識が戻るのには少し時間がかかるかもしれないと言われた。
病名についての説明をするかと思ったが、深夜だったため、後日することになった。
俺は赤の他人だしって思ってたんだけど、中野の親御さんが一緒に聞いてほしいって言ってくれた。
だから、俺の都合も合わせて説明を受けることになった。

「…脳に腫瘍?」
あれから2日後、俺の都合も合い説明があると言うので、病院へ。
中野はまだ目を覚ましていない。
「手術で腫瘍は全て取り除きました。ですがもう残り長くはないと思います。」
えっ。
どういうこと?
もう、中野は死ぬのか…?
中野の母は泣き始め、父はなだめている。
「先生、あとどのくらいうちの子は生きられるのですか?」
父が担当医に聞いた。
俺もそれが1番気になった。
「…1ヶ月ほどだと思います。でも、しっかり話せるのは今のうちだけだと思います。」
それを聞いた母はもっと泣いてしまった。
俺も泣きたくなった。

どうして…。
勉強だって頑張って、みんなに平等に接したり、いつも笑顔で…。
その笑顔はもう見れなくなるってことか?

俺はあれからどうやって家に帰ったか分からない。
気づけば朝になってて、学校に行った。
クラスメイトはみんな中野の心配をして、俺に詳しく聞いてくる。
とりあえずまだ目が覚めてないことだけは伝えたけど…。
俺にだってまだ心の整理ができてないのに、生徒に話せるかよ…。


倒れてから1週間が経った。
まだ眠っている中野。
俺はあれから、夜時間が早い時は見舞いに来るようにしている。
残された時間を大切にしたいと思ったから。

中野の手を握ると、とてもあったかくて…。
どうしてこんなにあったかいのに…。
あと1ヶ月したらいなくなるなんて。
信じられるわけがない。
早く目を覚ましてくれ。
話がしたいよ…。
握っている手がわずかに動いた気がした。
「…せ…んせ?」
「中野?!わかるか?」
頷こうとしたら手術したところが痛いのか少し顔を歪めた。
俺はナースコールをして担当医を呼んだ。