遠くに行っても

次の日、お見舞いに行くと、俺が誰かわからなくなっていた。
病室には、中野の母がいて、担任の先生よって紹介された。
2度目であっても、まだ辛い。

そのあと、中野の母と少し話した。
俺が昨日お見舞いに来た時、もう俺のことはわからなくなってたことを伝えた。
どういうわけか思い出してくれたけど。
中野の母が、もうすぐ私のことも忘れてしまうのね、とボソッとつぶやいていた。


次の日も、お見舞いに行った。
「あ、先生、お久しぶりです」
えっ?今先生って呼んだ?
「俺のことわかるのか?」
「先生何言ってるんですか??」
「いや、なんでもない、元気そうだな!」
元気そうなのは本当だった。
顔色も良くて、無理して笑ってる感じではなかったから。

色々話してたら思い出したかのように俺に遺書を書いたと教えてくれた。
「読むの楽しみにしててくださいね〜」
「なにかいたの?」
「それは、読む時のお楽しみですよ!」
「あ、そうだな」
2人で笑って…。

「私が遠くに行っても、忘れないでくださいね〜」
何言ってんだよ、そんなこと言うなよ…。
俺は笑って
「忘れるわけないだろ!」
って答えたのに。
「…先生、何を忘れないんですか?」
ついさっき話してたことまで忘れてしまっていた。
そのあとも話が噛み合わない事が結構あって…やっぱりあと1週間は本当なのかなって思ってしまった。