暴走族の姫 Ⅰ

悠side






「入るよー!」

















ノックの音が聞こえたと思えば、すぐに麗が入ってきた。
















優喜と抱き合っていたのでパッと離れて、麗に視線を向けた…。

















「あれぇ?昨日散々ヤってたのに、まだお取り込み中だったの?」
















ニヤけ顔で、そう問うてくる麗は私にとっていままでにない、イラッと感を感じさせてくれるものになった。
















私は丁寧に麗の股間を蹴りあげた…。















爽快な気持ちであった。

















私は普通に麗を心配する優喜を置いて、幹部室に向かった。
















コンコンッガチャ










「ッあ」









「悠!」








上手く歩けない私は躓くことが多くなっていた。











私転けそうになった私を受け止めたのは、蘭だった。
















それを微笑ましそうに見ているのが沙羅…。
















そして、ソファに座ってグッタリしているのが昨日、私の兄と名乗った男だった。

















にわかに残る上品な酒の香りと、空になった名酒の瓶を見て大体の状況は察した。
















昨日、男が持っていた威圧感の様なものは、消えていた。
















「隣に座ってあげてください。本当にあなたのお兄さんのようです…。」
















私には兄がいたのかと信じがたくはあったが、















よくよく見れば確かに目元が自分に似ているのは確かだった。
















「ん…悠!?」
















私の兄は飛び起きて私をまじまじと見つめて、それから深く頷いた…。
















「悠…生きていてくれてありがとな。」
















その一言を聞いて、何故だか分からないが涙が溢れだした…。
















すると、兄はゆっくりと壊れ物を扱うかのように優しく抱き締めてくれた。
















泣き止むと、いままでのことを、月冴に聞いた。
















「そんなことがあったのね。お母さんを思い出すことが出来たら悲しめるはずなのに…。」
















しかし、月冴から聞いた話は真実ではないことをあとから知ることになる…。