沙羅side
「で。倒れた悠を自室に連れて入って戻らないと、それどころか如何わしい行為に発展しそうだとそういうことですか…。」
私がそう問うと、麗は頷いた。
「はぁ。もういいです。やっと二人の時間を過ごせているので良しとしましょう。」
今目の前に座っているのは、悠の兄だと言う男だ。
「そういうことだそうですので、悠は来ません…。今やっと悠は、立ち直り始めたところです。」
もし兄だと言うならば、何故いままで劣悪な環境で育っていた悠を放おっておいたのか。
私はそれが許せなかったのだ。
しかし、返ってきたのは拍子抜けするような一言だった。
「立ち直り始めたところとはどういうことですか?」
嘘をついているようには見えない。
本当にこの男はなにも知らないのか…。
「何も知らないの!?」
麗が直球過ぎる言葉を投げ掛けたが、その男の眉間にさらに皺がよるだけだった。
「その“何か”が話せるのは、あなたが悠の兄であると言う証拠を見せてもらってからです。」
すると、男は名刺と書類等を渡してきた。
「実を言うと、悠との思い出はあまりないんです…。私は母親の方に引き取られたので…。」
その男は桜 月冴(さくら つかさ)と名乗った。
いくつか悠について分かったことがある。
進藤 唯は離婚経験があり、その相手は月冴の母親である、桜 美(はる)で、
それはイコール悠の実の母親でもあるということだ。
離婚が決まった当初、
美は月冴と悠のどちらも引き取ろうとしたが、
金銭的に余裕がなく、
進藤 唯が譲らなかった事もあり、
お互いに一人ずつ育てようということになったそうだ。
ここまで話したり書類等を見せられると、
この男が赤の他人どころか本当に悠の兄であると確信できる。
「ここまで、用意周到にされているということは、悠を引き取りに来たということですか?」
そう訪うが、月冴は首をふり、訳を話始めた。
「いえ。悠はここを大切にしているようですし。
それから無理矢理引き剥がそうなどと無粋なことは申しません。
ただ、母の最期に会ってやってほしいのです。
3ヶ月ほど前、母が倒れ病院で余命宣告を受けたのですが
母は最期に悠に一目でも会いたいと申しました。
そして、悠の足取りを辿ったところ、ここに悠がいると…。
それで、ここに来てみたのですが…。」
そこで、こちらの様子を伺うように話は途切れた。
「ではまず、私たちと悠の出逢いについてお話しさせていただきます…。
その後で貴方の本当の職業を聞いても?」
月冴は少し驚いてから鋭い笑みをみせた。
これは私の予想ですが、月冴はやはり堅気ではないと思います。
それから私と蘭と麗がそれぞれの悠との思い出を語った。
「で。倒れた悠を自室に連れて入って戻らないと、それどころか如何わしい行為に発展しそうだとそういうことですか…。」
私がそう問うと、麗は頷いた。
「はぁ。もういいです。やっと二人の時間を過ごせているので良しとしましょう。」
今目の前に座っているのは、悠の兄だと言う男だ。
「そういうことだそうですので、悠は来ません…。今やっと悠は、立ち直り始めたところです。」
もし兄だと言うならば、何故いままで劣悪な環境で育っていた悠を放おっておいたのか。
私はそれが許せなかったのだ。
しかし、返ってきたのは拍子抜けするような一言だった。
「立ち直り始めたところとはどういうことですか?」
嘘をついているようには見えない。
本当にこの男はなにも知らないのか…。
「何も知らないの!?」
麗が直球過ぎる言葉を投げ掛けたが、その男の眉間にさらに皺がよるだけだった。
「その“何か”が話せるのは、あなたが悠の兄であると言う証拠を見せてもらってからです。」
すると、男は名刺と書類等を渡してきた。
「実を言うと、悠との思い出はあまりないんです…。私は母親の方に引き取られたので…。」
その男は桜 月冴(さくら つかさ)と名乗った。
いくつか悠について分かったことがある。
進藤 唯は離婚経験があり、その相手は月冴の母親である、桜 美(はる)で、
それはイコール悠の実の母親でもあるということだ。
離婚が決まった当初、
美は月冴と悠のどちらも引き取ろうとしたが、
金銭的に余裕がなく、
進藤 唯が譲らなかった事もあり、
お互いに一人ずつ育てようということになったそうだ。
ここまで話したり書類等を見せられると、
この男が赤の他人どころか本当に悠の兄であると確信できる。
「ここまで、用意周到にされているということは、悠を引き取りに来たということですか?」
そう訪うが、月冴は首をふり、訳を話始めた。
「いえ。悠はここを大切にしているようですし。
それから無理矢理引き剥がそうなどと無粋なことは申しません。
ただ、母の最期に会ってやってほしいのです。
3ヶ月ほど前、母が倒れ病院で余命宣告を受けたのですが
母は最期に悠に一目でも会いたいと申しました。
そして、悠の足取りを辿ったところ、ここに悠がいると…。
それで、ここに来てみたのですが…。」
そこで、こちらの様子を伺うように話は途切れた。
「ではまず、私たちと悠の出逢いについてお話しさせていただきます…。
その後で貴方の本当の職業を聞いても?」
月冴は少し驚いてから鋭い笑みをみせた。
これは私の予想ですが、月冴はやはり堅気ではないと思います。
それから私と蘭と麗がそれぞれの悠との思い出を語った。


