なんであいつなんだろうなんて、もう考えるのはやめた。

だって、あいつじゃなきゃダメだから。

ただそれだけの理由。

どれだけ最低でも、あいつが好きだから。


「はぁ。」


黒板に文字を書く音と、クラスメイトの声が

吐き出したため息をかき消す。




ノートの片隅に文字を書いては消す。

私が一番好きな漢字。


‘’智冬瀬‘’ チトセ

私が好きで仕方がないあいつの名前。

玖弥夜 智冬瀬 クミヤ チトセ


名前そのものがあいつを表していて、


冬の様に冷たい瞳に、私は恋に落ちた。










‘’一目惚れ‘’だったんだ―――。