「…何でもない。」



言えるわけがない。

言ってどうなるの。


「あっそ。」



背を向けて歩き出すチトセ。


今すぐにでも抱きつきたいのに。

好きだって言いたいのに。


何も出来ないのは、ただただ臆病だからで。






「…シア。」


突然聞こえたその声に、驚き振り返れば。





「明日、俺んち来て。」



あぁ、ダメだ。

喜んじゃいけないのに。

私はただ遊ばれてるだけなのに。




「…分かった。」


私はバカだ。


「待ってる。」



私の事なんて好きじゃないこいつが。

私のことを弄ぶこいつが。


好きで好きでたまらないんだ―――。