私の声に反応して、肩越しに振り返った彼を渾身の力で睨みつける。

一気に警戒の色を強くした私を見下ろすのは、鋭い目から覗く黒目がちな瞳。

冷気さえ感じそうなその視線の鋭さに、掴んでいたバックを握る手に力が入る。

そんな私を見て、男性は酷く面倒くさそうに溜息を吐いた。


「あんたの両親に頼まれた」

「へ?」

「あんたを、家まで連れて来いって」


必死の攻防戦の末、意味不明な事を言い出した男性の言葉に瞬きを繰り返す。

え、待って、なんで私の両親がこの人に私の迎えを頼むの?

ますます、怪しい!


「で、でも、今父が迎えに来ると母から連絡がありましたので」

「だから、俺はあんたの父親の変わり」

「は? 何言ってるんですか? っていうか、あなた誰!?」


一つのバックを互いに握りしめながら、言葉のキャッチボールを必死にするが受け取ってもらえない。

というか、意味が分からないし、猛烈に怪しい。

もはや、誘拐!? なんて事まで浮かんできて、冷や汗が滲む。


そんな私の頭の中を感じ取ったのか、呆れたように男性は溜息を吐いた。

そして、驚く事を口にしたんだ。