守りたい人【完】(番外編完)

振り返る勇気なんてなくて、朝比奈さんに背中を向けたまま固まる。

何か適当な事を言ってはぐらかせばいいのに、肝心の言葉が浮かんでこない。

無意識に息を止めたまま、グッと唇を噛み締めていると。


「その態度、なんなの」

「……その態度って?」

「自分でも分かってるだろーが」

「――」

「あからさますぎて、すげー気分悪い」


一段と不機嫌そうな声でそう言われて、更に言葉が詰まる。

それでも、いつまでもこうしちゃいられないと思って、腕を掴まれたまま朝比奈さんに向き直った。

それでも、顔を見れるわけもなく俯いたまま自分のつま先を見つめた。


「言いたい事があるなら言えよ」

「――」

「あるんだろ。言いたい事」


私の腕を掴んで離さない手が熱い。

バクバクと心臓が早鐘のように鳴って、朝比奈さんにまで聞こえてしまいそうだ。

それでも、ぐっと唇に力を入れて顔を上げる。

すると、案の定不機嫌そうな朝比奈さんが私をじっと見つめていた。