守りたい人【完】(番外編完)

慌てて食堂に食事の用意をセットして、そそくさと自室へ戻ろうとした。

その時――。


「何コソコソしてんの」


突然背後からそんな声が聞こえて、驚いてその場で飛び上がる。

そして勢いよく振り返れば、案の定、無表情の朝比奈さんがこちらを見つめていた。

その姿を見て、一気に視線が泳ぐ。


「あ、お、おかえりなさい」

「――」

「ご飯、温めて食べてくださいね」

「――」

「おかわりは、炊飯器の中にあるので」


視線を地面に這わせて、早口で一気にそう言う。

その間も朝比奈さんは無言で、私から視線を外さなかった。

その無言の圧に耐えきれなくて、慌てて食堂を出ようと駆ける。

それでも。


「なぁ」


朝比奈さんの横を通り過ぎようとした瞬間、突然腕を掴まれて足が止まる。

その瞬間、ドクンと大きく心臓が鳴って胸に痛みを生んだ。