「うえぇぇぇぇっ! 朝比奈さんとキスして、朝起きたら裸で抱き合ってたぁ~っ!?」
「たまちゃん、声が大きいっ! それに抱き合ってたんじゃなくて、腕枕されてたの!」
「それを抱き合ってたって言うんだよぉぉぉ!!」
山の向こうにまで聞こえるんじゃないかって程の大声に、一気に冷や汗が湧き出る。
慌てて、たまちゃんの口に手をやると、ようやく声が途切れた。
「声がでかいからっ!」
「ごめんごめん! でもここらへんにいる人達と喋る時、これくらい大声じゃないと聞こえないんだもん」
慌てふためく私とは正反対に、あはははっと笑ってたまちゃんは天を仰いだ。
その姿を横目に、はぁっと大きく溜息を吐く。
「なんかもう、どうしてそうなったか自分でも謎。この年にもなってお酒に溺れるなんて、恥ずかしくて死ねる~」
「志穂ちゃんは全然覚えてないんだ?」
「全く。朝起きたら、あの人の腕の中だった」
「わぁ! なんか少女漫画みたいな展開!」
「笑い事じゃないよ~」
「んふふ。それでそれで? 朝比奈さんは何て?」
「あの事件以来避け続けているか、喋ってないし、会ってもない……」
「え~朝比奈さん可哀想~」
頭を抱える私の隣で、キラキラと目を輝かせるたまちゃんは、全くもって他人事の様子。
いや、もはやこの状況を楽しんでいる。



