それは、どことなく後ろめたさを感じていたから。

私はこの町を捨てて、さっさと東京に行ったんだから。

それに、都会かぶれとか思われないだろうかと変な不安が過った。

それでも、たまちゃんはニコニコと笑いながら私の返事を待っている。

その姿を見て、意を決して口を開いた。


「いたよ……でも、別れちゃったの」

「どうして?」

「ん~、仮面カップルだったのかも」

「仮面カップル?」

「見栄を張って本当の自分を隠してた。今思えば、嫌われたくなくて上辺だけの関係だったのかもしれない」


ふふっと俯いたまま笑って、そう呟く。

私と彼は、今思えばお互い上辺しか見ていなかったのかもしれない。

本当の気持ちなんて伝えた事無かったように思う。

だけど、それでも――。


「結婚したいって思うまで好きだった人に裏切られたら、上辺だけの関係でも辛いよ」


だけど、彼は3年間一緒の時間を過ごした私ではなく、後輩のあの子を選んだ。

真っ暗な事務所でキスをしていた2人を見た瞬間、私の今まで築き上げたものは全部消えたんだ。