「わ、私が姫野志穂です!」
そう言って、慌てて男性のもとに駆け寄る。
すると、私より頭一つ大きな男性は無表情のままじっと私を見下ろしてきた。
鋭い瞳が、真っ直ぐに私を射る。
威圧感さえ感じるその瞳に、たじろいでしまいそうになった。
それでも。
「荷物持って」
「へ?」
「家まで送る」
「え、あの、え?」
「荷物それだけ?」
「あの、どなたですかっ」
言葉のキャッチボールができない私に嫌気がさしたのか、男性は床に転がった私の荷物を軽々と持ち上げて出口へ歩いて行こうとする。
その姿にヒヤッとして、慌てて荷物を剝ぎ取った。
何この人!?
っていうか、誰!?
ひったくり!?



