見た事もない男性に声をかけられた私は、思わずフリーズしてしまった。

というか、なんでこんなイケメン風な人が私の名前知ってるのっ!?

同級生にこんな人いたっ!?

それとも、誰かの旦那さんとか!?

いやいや、それでも私の名前をフルネームで知ってるっておかしいでしょっ！


内心パニックになる私を、表情一つ変えずにじっと見つめる男性。

それでも、そのうち何も言わずに固まる私からフイッと視線を外して踵を返した。


「すいません。人違いでした」


そう言って、そこから立ち去ろうとする男性を見て我に返った私は、慌てて固まっていた体を持ち上げる。

その瞬間、膝の上に置いていた荷物がボスンと落ちたけど、気にせず声を上げた。


「え、あのっ、いや、待ってくださいっ」

「はい？」

「私です、私！」


その声につられて、再び顔を覗かせた男性が眉間に皺を寄せて私を見つめる。

その表情が怖かったけど、ひるまず声を上げた。