「何」


きっと、すわっているだろう目で見つめられた事が不愉快だったのか、朝比奈さんは眉間に皺を寄せて、そう呟く。

いつもなら当たり障りない事を言ってはぐらかすのに、今は思考回路が上手く働かない。


「何よ。ケンカ売ってんの~?」

「――」

「そんな不機嫌そうな顔してないで、少しは付き合いなさいよ」


フワフワする体のまま、近くに置いてあった缶ビールのプルタブを開けて、立ち尽くす朝比奈さんに手渡す。

まぁ、どうせ無視するんだろうけど。

そう思って、差し出した缶ビールに口をつけようと思った、その時。


「全然冷えてないじゃん」


大きな溜息と共に私が差し出したビールを受け取った朝比奈さんは、勢いよくそれを煽ると共に、ぶっきらぼうにそう言った。

そして、ドカッと私の向かいに腰かけて、ラップを外して私が用意したご飯をつまみにビールを飲みだした。


まさかのその姿に、ポカンと口を開けて固まる。

すると、そんな私に気づいてか朝比奈さんの視線が私に向けられた。