守りたい人【完】(番外編完)

「誠兄ちゃん、飛ばしすぎ~!」

「ほら、走れ走れ~」


一瞬人違いかと思う程の別人ように、穴が開くほどその姿を見つめる。

それでも、間違いなくさわやかな笑顔を浮かべているのは朝比奈さんで、朝方私が作った卵焼きに文句をつけていた人と同一人物だ。


「誠兄ちゃん、バッティング教えて!」

「お~いいぞ~」

「僕も僕も!」

「順番な」


はしゃぐ子供達の髪をくしゃくしゃと撫でて、笑顔を振りまく朝比奈さん。

っていうか、いつもどこかに出掛けていると思ったら、こんな所で子供と遊んでいたのか。

大きな木に隠れて、楽しそうに野球をする子供達と朝比奈さんをじっと見つめる。

家とは真逆のその姿に、なんだかモヤモヤする。


「あんな顔もできるんじゃん」


ポツリとそう呟いて、唇を尖らせる。

家ではムスッとして、いつも私の事なんて無視なのに、なんなのよ。

そんなに私の事が嫌い?


「別に私も嫌いですよ~だ」


なんだか徐々に腹が立ってきて、楽しそうな子供達を横目に再び自転車を漕ぐ。

今日は手抜き料理にしてやる! なんて思いながら――。