守りたい人【完】(番外編完)

モヤモヤとしたものを胸に抱えて、フラフラと自転車を漕ぎながら、真っ直ぐな道を進む。

舗装もされていない砂利道は、気を抜けば転んでしまいそうだ。

そんな事を思いながら、ボーっとしていると。


「誠兄ちゃん、いったよ~!!」


不意に、無邪気な子供の声が世界に響いて我に返る。

ここに来て何日か経つけど、子供の声なんて初めて聞いた。

反射的に自転車を止めて辺りを見渡していると――。


「行くぞ~」


一瞬、視線の先に見えた光景に目を疑った。

少し離れた所にある小さな神社に、小学生くらいの男の子が3人。

楽しそうにグローブを持って、キャッチボールをしている。


まぁ、そこは問題ではない。


問題なのは、同じようにキャッチボールをしている一人の男性。

妙にその場に馴染んで、親しそうに子供達と遊んでいる。


「朝比奈……さん?」


そして、その顔に浮かぶのは見た事も無い程の笑顔。

いつもは不愛想で、どちらかというと不機嫌そうな顔をしていのに。

今は精悍な顔を惜しげもなく崩して、まるで子供みたいに無邪気に笑っている。