守りたい人【完】(番外編完)

そんな幼少期を送ったからか、大人になった今でも我儘を言わない事が身についている。

ううん、言えないのだ。


そしていつしか我儘どころか、本音も言えなくなった。

思った事も一度胸の中で消化して、当たり障りない事を口にする。

いつも仮面をかぶって、いい子ちゃんを演じている。

『完璧な私』を演じている。


だから、そんな今までの私を思えば、たまちゃんの言う通り、初対面からこんなにも本音でぶつかった人は初めてかもしれない。

いつもなら、いい子を演じて何事にもイエスマンだったから。

あんな風に自分の意見をぶつけたりしない。

まぁ、きっとあれだけ腹の立つ態度を取られて、もうどう思われようが関係ないって、早々に割り切ったからだと思うけど――。


「あ~も~何度思い出しても腹立つ!」


不意に、あの人のスカした顔が脳裏に蘇って勢いよく頭を振る。

そして、モヤモヤとした気持ちを振り払うように勢いよく立ち上がった。

そんな私を見て、たまちゃんも笑みを浮かべながら、ゆっくりと立ち上がる。