「むっかつく~っ!!」


キーッっと暴れながらそう言った私に、隣に座っている『たまちゃん』はケラケラと笑った。

そして『イライラした時は甘いもの』と言って、持ってきてくれていたお饅頭を一つ私に手渡した。


彼女、多磨 好美(たま よしみ)通称『たまちゃん』は私の幼馴染で、今も変わらずこの町に住んでいる。

両親が昔からパン屋さんをしていて、その店を潰したくないとかで生まれも育ちも、ここ。

化粧っ気のない色白の肌は大福みたいで、食べるのが大好きで、おっとりした性格のたまちゃん。

いつもニコニコしていて、陽だまりみたいな子。

私がこっちに帰ってきた事を知って、一番喜んでくれたんだ。


幼稚園から高校までずっと一緒だったのに、私がこの町から出てからというもの、一切連絡すら取っていなかった。

そんな薄情者な私なのに、再会してからも昔と変わらない様子でたまちゃんは接してくれた。


私は、もともと自分の事を話したりするのが苦手な性格だ。

だけど、昔からたまちゃんにだけは何でも話せた。

何でも受け止めてくれる優しさがあるたまちゃんだからこそ、自分の弱い部分も安心して見せる事ができたんだと思う。


久しぶりに再会してからも、それは変わらなかった。

今、この町で唯一の私の友達だ。