「頑張ってね、志穂ちゃん」
手を振る私に、志穂ちゃんは『いってきます』と大きく手を振り返してくれた。
これから志穂ちゃんには、新しい場所で、新しい友達も増えて、新しい居場所もできるんだろう。
そうなれば、私の隣が一番落ち着くと言ってくれた志穂ちゃんは、次会う時にはいなくなっているのだろうか。
私の知らない志穂ちゃんになってしまうのだろうか。
動き出した電車を、ただ茫然と見つめる。
胸の奥が熱くなって、涙が溢れた。
志穂ちゃんを乗せた電車が、ゆっくりと遠くに消えていく。
その先に私は行けない。
私はずっと、この小さな町に囚われたように住み続ける。
自分で決めた事なのに、どうにもこうにもやりきれない。
「志穂ちゃん」
一番の親友が、この町から巣立っていった。
私だけが、真っ赤な夕日に照らされて消えていった。



