学生時代は志穂ちゃんのおかげで毎日楽しかった。
一緒に笑って、悩みを相談して、毎日が充実していた。
だけど、志穂ちゃんは高校を卒業して直ぐに、この町を出て行った。
この町を嫌いなのは、昔から知っていたから驚く事はなかった。
そりゃここには何もないし、どこに行くのも不便だし、私も出たいなと思った事はある。
それでも、実家のパン屋を潰したくなかったし、家から通える調理専門学校に進学する事にしていた。
志穂ちゃんが進学したのは、東京にある有名な大学。
毎日必死に勉強しているのを知っていたから、受かったと聞いた時は自分の事のように嬉しかった。
正直、離れるのは寂しかったし辛かった。
私の今までの人生の中で志穂ちゃんは中心にいて、今じゃ姉妹みたいな存在だったから。
「元気でね、たまちゃん」
そんな私とは正反対に、大きな荷物を持って駅のホームに立つ志穂ちゃんは、どこか嬉しそうだった。
これからの未来に希望をもって、ワクワクしている様子だった。



