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「志穂さーん、これこっちですか~」
間延びした誰かの声が広い中庭に響く。
その声に反応して顔を上げると、大きな書棚を持った2人の男の子がこちらを向いて叫んでいた。
「あ、そこそこ~! そこの隅に置いておいて~!」
「は~い」
元気な声を聞いて、私まで笑顔になる。
ふぅっと短く息を吐いて辺りを見渡せば、沢山の人がそこにいた。
「あ、志穂ちゃん、ここにおったんか」
思わず零れる笑みを隠す事なく、その光景を見つめていると、不意にそんな声がかかって後ろを向く。
すると、沢山の野菜を入れた大きな籠を担ぐ鍛冶君がいた。
「凄い沢山の野菜! どうしたの!?」
「隣町の人から貰ろてきたんや。ボランティアの人達に差し入れやて」
「うわぁ! 嬉しい!」



