守りたい人【完】（番外編完）

大嫌いで逃げ出した故郷に帰ってきた、あの日。

初めて朝比奈さんと会った時。

あの時は、こんなにもこの人を好きになるなんて思いもしなかった。


あの時の朝比奈さんは、まるで傷ついた一匹狼みたいで。

周りから自分を遠ざけているように感じた。


私も私で、過去の恋愛を引きずって何もかもに疲れていた。

どこか静かな場所で、何も考えずにいたかった。


いろんな事があって、下宿屋をする事になって。

それでも、反発してばかりだった私達。

だけど、殻に閉じこもっていた私を不器用ながらに慰めてくれた朝比奈さん。

きっと思えば、この時から私はこの人に惹かれていたのかもしれない。


一緒に過ごしてくうちに、不器用なだけで本当は誰よりも優しい事を知った。

誰よりも繊細で、周りの事を考えている事を知った。

それを知れば知るほど、私はこの人を好きになった。

目で追うようになった。


何度も諦めた恋だった。

自分がこんなにも臆病で、泣き虫で、意地っ張りで、意気地なしだと知った。

それと同時に、これほどまでに自分が誰かを愛せるのだと知った。


朝比奈さんの帰りを待つ間。

不安に押し潰されそうになる中、何度も思った。

私はもう、この人なしでは生きてはいけないのだと。