守りたい人【完】(番外編完)

「鍛冶君に?」

「この年になって、上司以外で怒られるのは初めてだった」

「え? え? どういう事です? っていうか、あれ? 鍛冶君は?」


今更ながら、鍛冶君がいない事に気づいた薄情者の私を見て、再びクスクス笑った朝比奈さん。

そして、気を利かせたんだろ。と言って、溜息を吐いた。


その言葉に首を傾げた私だったけど、再び朝比奈さんの視線が戻ってきてドクンと心臓が跳ねる。

いつもと違う雰囲気のその姿に、妙に体中が緊張していた。

すると。


「鍛冶の思惑のまま動くのは癪だけど」

「え?」

「だけど、やっぱり俺の中で、志穂は特別だって気づいた」


特別。

その言葉に、一気に心臓が早鐘を打ち始める。

一言一句聞き逃さないように、全神経を集中させる。

そんな私の必死な姿が面白かったのか、ふっと小さく笑った朝比奈さんは、何の前触れもなく私の頬にそっと触れて言った。


「俺が一番に守りたいと思えるのは、志穂だ」