一瞬、聞き間違いかと思った。
その言葉をすぐに理解できなくて、何度も何度も頭の中で繰り返す。
そうして、ようやく理解できた時には、顔に一気に熱が集まった。
真っ赤になる顔を見られるのが恥ずかしくて、慌てて掴まれていた手を払って顔を隠す。
そして、長い髪で顔を覆うように下を向いた。
その瞬間、クスクスと小さく朝比奈さんの笑い声が聞こえた。
何か言おうと思うのに、声が出てこない。
すると。
「顔、上げろ」
囁くようにそう言われたけど、抗うように顔を左右に振る。
だって、今の私の顔、きっと茹でダコみたいだ。
恥ずかしいのか、ドキドキなのか分からないけど、呼吸まで早くなっている気がする。
そんな爆発寸前の私を無視して、朝比奈さんの大きな手が私の顎先を優しく掴んで上を向かせた。
導かれるまま顔を上げた私を見て、朝比奈さんはクスっと小さく笑った。



