守りたい人【完】（番外編完）

「明かりや食料もなく、雨が降り続く中、いつ救助に来るかも分からない不安で泣き出す要救助者を励ましていた。必ず助けは来るから大丈夫だと」


その言葉を聞いて、その場面が脳裏に浮かぶ。

自分の事なんてかえりみずに、誰かの為に必死になっている姿。

私はその声に、その言葉に、何度助けられただろう。


真っ直ぐで迷いのないその声は、不安だった気持ちをいつも軽くしてくれた。

この人が言うなら大丈夫だと、不思議な安心感があった。

それは、きっと、この人の事を私が誰よりも信用しているから。

一度口にした事を必ず守る人だと知っているから。


思わず、彼の手をギュッと握る。

すると、下を向いていた朝比奈さんの視線が持ち上げられた。

そして、真っ直ぐに私を見つめて言った。


「そんな時、不意に浮かんだのは、志穂の事だった」

「え？」


突然のその言葉に目を瞬く。

そんな私を見て、朝比奈さんは僅かに目を細めた。