なんだか胸がいっぱいになって、言葉が出ない。
それでも、ゆっくりと体を持ち上げて、ベットの背もたれに体を預けた。
そして、オズオズと確かめるように朝比奈さんの手を取ってギュッと握りしめた。
「……あったかい」
「――」
「無事で良かったです」
じんわりと広がる手の暖かさを確かめた瞬間、再び安堵の気持ちが広がる。
ホッと息をついて、朝比奈さんを見つめた。
そして、今にも泣きだしそうな気持ちを抑えて口を開く。
「おかえりなさい」
そう言った瞬間、朝比奈さんの黒目がちな瞳が僅かに揺れた。
そして、逃げるように視線を伏せてしまった。
その姿を不思議に思いながら首を傾げる。
「朝比奈さん?」
「――…そういうの反則」
「え?」
「なんでもない」
下を向いたまま、何やら呟いた朝比奈さんだったけど、その言葉は聞き取れなかった。
どうしたんだろうと思いながら、掴んでいた手を離そうとした、その時――。



